最近、顧問先の役員の方と雑談している中で、私がLGBTQの話を振ったところ、その役員の方は「この前、採用面接をした際に、性的少数者であることをカミングアウトしてきた人がいました」と言われていました。各種調査によれば、人口の約10%がLGBTQ(性的少数者)に該当するとされています。そうすると、今後、このような状況は、いろいろな会社で起こり得る状況になるのかもしれません。
「LGBTQ」は、レズビアン(lesbian、女性同性愛者)、ゲイ(gay、男性同性愛者)、バイセクシャル(bisexual、両性愛者)、トランスジェンダー(transgender、心と身体の性の不一致)、最後のQは、Questioning(クエスチョニング、自らの性の在り方について特定の枠に属さない人や分からない人)を意味し、要するに、性的少数者の総称です。
「LGBTQ」のめぐる社会的状況は、平成27年に渋谷区が「同性パートナーシップ条例」を制定したことを手始めに、令和4年には東京都で「東京都パートナーシップ宣誓制度」の運用を始め、さらに、国レベルでは、令和5年に「LGBT理解増進法」が成立施行されています。
また、ここ数年、「LGBTQ」の問題に関連する裁判例も集積されつつあります。具体的には、生物学的には男性なのですが、女性として暮らすトランスジェンダーの経済産業省の職員が、省内での女性トイレの使用を不当に制限されたのは違法だと国を訴えた訴訟で、最高裁は、この制限に問題はないとした人事院の判定を違法とする判決を言い渡しました(最判令和5年7月11日)。
このほか、同性のパートナーが犯罪被害者支援法に定める「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に含まれるか否かが争われた事案で、最高裁判所は、犯罪被害者の死亡により、民法上の配偶者と同様に精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る法律の趣旨は、犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものではないとして、犯罪被害者と同性の者は、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得る、としました(最判令和6年3月26日)。
さらに、LGBTQに関する問題では、「アウティング(本人の同意なく、その人の性的指向や性自認に関する情報を第三者に暴露すること)」の問題への対応を考えておく必要があります。このアウティングについては、これが「パワハラ」に該当することにもなりかねず、慰謝料請求訴訟を提起されたりすることもなり得ます。
以上のような社会事情の変化を考えてみると、LGBTQの問題は、もやは「うちにはそうした人はいないから関係ない」と言える状況ではなく、社会一般で理解を深める問題だといえます。